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勤ボラの家&NPO事業サポートセンターの「森林づくり体験ボランティア」
〜NPOと森林組合の連携事例〜


 「勤ボラの家」は勤労者ボランティアセンターの森林体験講座参加者を中心に、継続的に都市部周辺の農山村との交流や里山整備、農業体験などの活動をするために、茨城県那珂町に拠点をつくり、活動を進めているボランティア団体です。毎年行われる森林体験講座では、参加者が間伐作業や下草刈りなどで汗を流しながら、森林の恩恵と森林の手入れの必要性を実感する貴重な体験をしています。

 今年は新しい試みとして、全国森林組合連合会(だれもりネットワーク)が連携させていただきながら、地元の八郷町森林組合、茨城森林管理署、県内のNPO団体 いばらき森林クラブによる森林づくり体験活動が行われました。

●"森林から元気をもらいませんか"
 『森林づくり体験ボランティアレポート』


2003年9月27日(1日目)
 朝8:30に東京駅に集合した参加者・総勢41名は、バスに乗り一路茨城県笠間市へ向けて出発。企業に配布された募集広告やインターネット等を通じて、初めて森林ボランティアに参加する人達が大半。女性の参加者は17名と多い。はるばる大阪から参加された方もいた。事前に集められた参加者プロフィールの冊子が配られ、バスの中では自己紹介や森林の現状や森林を守ることの意義について簡単なレクチャーがあった。

 昼前に北山公園に到着。ここから班に分かれて昼食をとり、いよいよ山に入る。公園から徒歩10分程で、本日の活動場所である国有林に到着。本日お世話になる茨城森林管理署の皆さんとご対面。各自のこぎりや、ヘルメットを受け取り、いざ森林の中へ。足下は落ち葉が積み重なってふかふかとクッションの上を歩いているようだ。
写真1 写真2

 まずは森林インストラクターの方から、間伐の必要性や今日のフィールドについて簡単な説明を受ける。間伐は、込み合った林から一定量の木を伐ることで密度を下げ、質的な淘汰により枝下の長い完満な材を生産するためや、森林に光が入るようにするために行う。今日の間伐対象の木は林齢25年。それぞれの木々の枝が重なって育っているため、空はあまりみえず、森林に入る前はじりじりと照りつけていた真夏のような日差しもほとんど見えない。
写真3 写真4

写真5  森林管理署の人から、間伐の仕方を教わる。まず木を伐る時には、木を倒す方向を考えなくてはならない。木々の間隔が狭いため、木を伐っても周りの木の枝にひっかかって簡単には倒れないことが多い。よく考えてから作業に入らないと、思わぬ方向に木が跳ね返ることもある。木を伐ることは体力勝負の作業かと思っていたが、知識と経験による状況判断をくり返す作業なのだった。間伐はもとより、のこぎりを使うこと自体ほとんど経験がない参加者もいたが、ひと班に1名ずつ指導員がついているので、丁寧にアドバイスをもらいながら(時には手伝ってもらいながら)木を伐っていく。

 森林の中は作業のかけ声や木が倒れる音と、鳥の鳴き声以外の音はなく、静かだ。木が倒れる瞬間のメキメキッ・バサーッ、ドサッという音がとても心地よい。深く息を吸い込むと、伐り株からただようヒノキのいい香りがする。作業は約3時間ほど行われ、気がつけば森林からは明るい空が見えるようになっていた。
 今日の間伐目標・一人3本はほとんどの参加者がクリアし、「もっと伐りたい!」という参加者も少なくなかった。それくらい夢中になれる作業だった。
動画はこちらから

 間伐作業は普段の生活にない姿勢や動きが多いためか、直径が15〜20センチくらいの木を伐るだけでも、汗をかく。今までにない爽快感だ。これまでなんとなく頭で理解していた間伐の意義を、自ら体験することで実感できた。
 参加者は宿舎にて1泊。夜はお楽しみの交流会が行われた。みんなで一緒になって汗をかいた間伐作業のお陰で、今朝までは赤の他人だった者同士とは思えない程、仲良くなっていた。

2003年9月28日(2日目)
 早朝から希望者が集まってバードウォッチング。前日の疲れも交流会の二日酔いもさめるほど、里山の朝は清々しい空気でいっぱいだった。普段は気にもとめなかった鳥の声に、参加者一同耳を澄ます。
 野鳥に詳しい参加者の好意で望遠鏡をのぞかせてもらう。山鳩がいた。その姿は普段みかける鳩に似ているが、たたずまいが貴婦人のようで美しかった。

 朝食を済ませ、今日は八郷町の「古事の森」にて、班に分かれて下草刈、枝打ちを体験する。
 「古事の森」は国定公園内の筑波山中腹の複層林試験地の一部にあたる。立松和平氏の提唱で始まった、伝統的建造物の修復材となる巨木を育てる森林づくりで、京都に次いで2番目に選ばれた場所である。今日の作業には、森林管理署の方と八郷町森林組合の方が作業の指導にあたって下さる。

 枝打ち班は頭にヘルメット、手には柄が2メートルほどある長い枝打ち用のこぎりを持ち、山を登る。現場につくと、枯れ枝がついたヒノキの林があった。枯れた枝はそのままにしておくと、死節の原因となるので、今日はこれを伐る。本来ならば枝打ちは、木の太さがビール瓶くらいの時に行うものなのだそうだ。ここにある木々は、多くがすでにビール瓶の時代は過ぎてしまっている。
 枝に対して直角にのこぎりをあてて引いていく。枝打ちする枝は、自分たちよりも高い位置にあるので、ずっと上を向いていると首や肩が凝り、木屑が目に入りそうになる。なるほど、フェイズガードはこういう時に役立つのだということがよく分かる。やはり道具は安全に作業を行う上でも重要だ。
写真6 写真7
 下草刈りは、今年の5月に「古事の森」の記念植樹が行われた場所のほか、数カ所に分かれて行われた。刃渡りが40〜50センチほどある鎌を使う。隣の人と間隔を空けて横にならんで作業をする。間伐や枝打ちに比べると地味な作業に思えるが、これも大切な作業だ。植樹されたヒノキはまだ小さいので、下草と間違って刈ってしまわないように注意をしながら周りの雑草などを刈っていく。まだ膝ほどの高さしかないヒノキが、将来、十数メートルもある巨木に育つとはまだ想像もつかない。

 作業の中休みで、八郷町森林組合の組合長木崎さんにお話をきいた。木崎さんのお宅は築200年という歴史ある家屋。最近は輸入材で建てられた家が多いが、長持ちする家を建てるなら、地元の木材で家を建てるのが一番良いそうだ。その土地で育った木だから地元の気候に合っているのは当然といえば当然だ。日本の湿度、天候を知り尽くしているのは、日本の木なのである。また最近の住宅は、家の柱を壁の中に隠してしまうため、せっかく木を使っていても、木が呼吸できずに木造建築の良さが発揮できないそうだ。木造の良さの一つとして、二酸化炭素の吸収源になるという点がある。都市部に木造住宅が増えれば、それは森林を持たない都市においては大きなメリットだ。
写真8 写真9

 作業は午前中で終了した。短い時間だったが体を動かし汗を流す作業で、参加者は普段とは違う充実感や爽快感を味わったようだ。そして昼食は八郷町森林組合のご好意で、バーべキューを楽しんだ。

 食事のあと、班毎に今回のボランティアを通して感じたことをまとめ、全員の前で発表しあった。中でも印象深かったのは、「間伐により生命を絶たれた木の命を無駄にしないためにも、間伐材を有効利用したい」という意見だった。現在、間伐後の木の多くはそのまま放置されている。自然災害により山が崩れた場合など、これらの木が土砂とともに流され、流木になることもある。また、近年、国産材自給率は18%といわれ、私たち国民が生活の中で利用している木材の大半は、海外で伐り出された木材であることから、私たちのライフスタイルを見直すことも重要だと思った。参加者の多くが、自ら間伐をしたことで木、森林への愛着を深めた結果生まれた意見だと思う。
 今回の参加者から、2名の男性が林業に就職することが分かり、彼等の決意表明をしてもらった。参加者、八郷町森林組合の方々、地元の森林インストラクターの方々から暖かい拍手でエールが送られた。他にも今回の参加者の中から、将来里山で森林と関わりながら生活することを考える人がいるかもしれない。皆の表情をみながらそう思った。

 間伐の時に大切なこととして、「作業する人たちで声を掛け合う」というのがある。木を伐るということは、一つ間違えば仲間や自分の命を落とすことにもなりかねない作業だ。大きな声で仲間に意志を伝えなくてはならないし、仲間と自分の安全を確保しなければならない。チームワークの大切さ、仲間を思いやること、自分の意志をきちんと伝えることなど、普段の社会生活でも必要なことを、自分はきちんとやっていただろうか?と、改めて考えさせられた。

 このような森林ボランティアを通じて、森林・里山保全の重要性を実感させられるとともに、ボランタリー精神の養成、地域住民との交流、視野の拡大など個人や企業のプラス要因に結び付けるための環境教育の一環として取り組む企業も少なくない。森づくり・緑化ボランティア活動は従業員からの人気も高く、これらの取り組みを行う企業は年々増加傾向にある。概念だけでは伝わらない体験を通した森林・環境教育を、社員教育の一環として、今後多くの企業が積極的に取り入れてもらいたいと思う。
写真10

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