早朝から希望者が集まってバードウォッチング。前日の疲れも交流会の二日酔いもさめるほど、里山の朝は清々しい空気でいっぱいだった。普段は気にもとめなかった鳥の声に、参加者一同耳を澄ます。
野鳥に詳しい参加者の好意で望遠鏡をのぞかせてもらう。山鳩がいた。その姿は普段みかける鳩に似ているが、たたずまいが貴婦人のようで美しかった。
朝食を済ませ、今日は八郷町の「古事の森」にて、班に分かれて下草刈、枝打ちを体験する。
「古事の森」は国定公園内の筑波山中腹の複層林試験地の一部にあたる。立松和平氏の提唱で始まった、伝統的建造物の修復材となる巨木を育てる森林づくりで、京都に次いで2番目に選ばれた場所である。今日の作業には、森林管理署の方と八郷町森林組合の方が作業の指導にあたって下さる。
枝打ち班は頭にヘルメット、手には柄が2メートルほどある長い枝打ち用のこぎりを持ち、山を登る。現場につくと、枯れ枝がついたヒノキの林があった。枯れた枝はそのままにしておくと、死節の原因となるので、今日はこれを伐る。本来ならば枝打ちは、木の太さがビール瓶くらいの時に行うものなのだそうだ。ここにある木々は、多くがすでにビール瓶の時代は過ぎてしまっている。
枝に対して直角にのこぎりをあてて引いていく。枝打ちする枝は、自分たちよりも高い位置にあるので、ずっと上を向いていると首や肩が凝り、木屑が目に入りそうになる。なるほど、フェイズガードはこういう時に役立つのだということがよく分かる。やはり道具は安全に作業を行う上でも重要だ。
|
|
|
下草刈りは、今年の5月に「古事の森」の記念植樹が行われた場所のほか、数カ所に分かれて行われた。刃渡りが40〜50センチほどある鎌を使う。隣の人と間隔を空けて横にならんで作業をする。間伐や枝打ちに比べると地味な作業に思えるが、これも大切な作業だ。植樹されたヒノキはまだ小さいので、下草と間違って刈ってしまわないように注意をしながら周りの雑草などを刈っていく。まだ膝ほどの高さしかないヒノキが、将来、十数メートルもある巨木に育つとはまだ想像もつかない。
作業の中休みで、八郷町森林組合の組合長木崎さんにお話をきいた。木崎さんのお宅は築200年という歴史ある家屋。最近は輸入材で建てられた家が多いが、長持ちする家を建てるなら、地元の木材で家を建てるのが一番良いそうだ。その土地で育った木だから地元の気候に合っているのは当然といえば当然だ。日本の湿度、天候を知り尽くしているのは、日本の木なのである。また最近の住宅は、家の柱を壁の中に隠してしまうため、せっかく木を使っていても、木が呼吸できずに木造建築の良さが発揮できないそうだ。木造の良さの一つとして、二酸化炭素の吸収源になるという点がある。都市部に木造住宅が増えれば、それは森林を持たない都市においては大きなメリットだ。
|
|
|
作業は午前中で終了した。短い時間だったが体を動かし汗を流す作業で、参加者は普段とは違う充実感や爽快感を味わったようだ。そして昼食は八郷町森林組合のご好意で、バーべキューを楽しんだ。
食事のあと、班毎に今回のボランティアを通して感じたことをまとめ、全員の前で発表しあった。中でも印象深かったのは、「間伐により生命を絶たれた木の命を無駄にしないためにも、間伐材を有効利用したい」という意見だった。現在、間伐後の木の多くはそのまま放置されている。自然災害により山が崩れた場合など、これらの木が土砂とともに流され、流木になることもある。また、近年、国産材自給率は18%といわれ、私たち国民が生活の中で利用している木材の大半は、海外で伐り出された木材であることから、私たちのライフスタイルを見直すことも重要だと思った。参加者の多くが、自ら間伐をしたことで木、森林への愛着を深めた結果生まれた意見だと思う。 今回の参加者から、2名の男性が林業に就職することが分かり、彼等の決意表明をしてもらった。参加者、八郷町森林組合の方々、地元の森林インストラクターの方々から暖かい拍手でエールが送られた。他にも今回の参加者の中から、将来里山で森林と関わりながら生活することを考える人がいるかもしれない。皆の表情をみながらそう思った。
|