間伐

第4回 近くの山の木で家を作ろう! 3/3 

3.近くの山の木で住宅をつくるには

神奈川県横浜本牧ふ頭。毎日外国からさまざまな商品が運ばれてくる場所。木材も、ここを経由して運ばれてくる。



「近くの山の木で家をつくる運動」を展開しているNPO緑の列島ネットワークのホームページ

さて、もしもあなたが木の香りのする家を建てたいと思ったときにどこに依頼するであろうか? 最近は大手住宅メーカーでも木の家をうたい文句にしているところも多いし、カナダや北欧などからの輸入住宅にあこがれを持つ人もいるだろう。こうした輸入住宅を誹謗するわけではないが、もしもあなたがペットボトルのリサイクルや、魚や肉のトレーの回収に協力的で、ゴミの分別にもできる限りの努力をしている人ならば、少し考えてみて頂きたい。外国から運ばれてくる木材は、その成長段階ではたっぷりCO2を吸い込んで、いわば固定化されたCO2の状態になっている。だが、その木が日本に運ばれてくるまでに、どれほどのCO2が排出されているのかを考えて頂きたい。遠路はるばる、外国の森林からトラックで港まで運ばれ、船に乗って日本に届けられ、それからまたあなたの町へ。海上輸送は、大量に運べるので1本1本の木材に注ぎ込まれる燃料のことをとやかく言うのは、揚げ足取りといわれるかもしれない。だが、もしもあなたが、あなたの住む町の上流にある森林で伐採された木で家を 作ったらどうだろう。最後のトラック輸送に関わるCO2排出だけで済むのであ る。これは、大きい。

だが、もしも、あなたが地球温暖化と日本の林業を憂慮し、国産のスギやヒノキの香り高い家を建てたい、と思ってもどこに連絡を取ればいいのかがわからない。それが現状ではないだろうか? そんな時に参考になるのが、近くの山の木で家をつくる運動を展開している「緑の列島ネットワーク」である。「緑の列島ネットワーク」がめざすのは「山の資源の循環的な活用を通した、健全な自然環境と地域経済の再興」であり、そのための核となる活動が近くの山の木で家をつくる運動というわけだ。

実際問題として、木の家を、しかも安心して住める家を建てるのは、なかなか簡単なことではない。長いことプレカットや新建材で家を建てることばかりしてき工務店の中には、継手、仕口の仕方もわからない職人ばかりのところもある。もしそれが可能でも、今度はきちんと乾燥されて、変形のすくない材を手に入れるのも一苦労である。そうしてできあがる家は、やはり新建材や外国産材を使った家よりも若干だが高くつく。つまり、施工主、設計、工務店、製材、そして山主が同じ目的を持って努力しなくては、本当に木の良さを活かした、安心して住める住宅を建てることはできないのである。ここでいう同じ目的というのは、山を守る、山を育てるという目的である。

いま、安い外国産材で家を建てれば、50万円、100万円の得になるかもしれないが、それがわれわれの子供や孫の世代に、森の荒廃という負債を押しつけることになる。山主は、成材を適切な価格で売れれば、その後の植林もできるし、間伐や枝打ちといった、山の管理にも人や金を割くことができる。木は、ローテクな材料だが、きちんと循環させることさえできれば、永久に絶えることのない資源である(太陽と雨がある限り)。他のあらゆる資源が不足している日本は、この木の資源に関しては、世界に誇れるほどの備蓄量がある。この資源を大切に守りながら活用する。それには、町に住む人々が、その資源の大切さを理解し、家を建てるときに国産材を使うことなのである。

「緑の列島ネットワーク」のホームページには、各地域の「近くの山の木で家を作る会」の連絡先が明記されている。もちろん、こうした会に属していなくても、近くの山の木できちんと施工してくれる業者もいるはずだ。家は一生の買い物である。そして、きちんとした建て方をすれば、100年持たせることができる。つまり、親子で、あるいは孫の代まで使うことができる可能性があるのだ。そのためには、消費者も木のことをもっと知るべきだろう。


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