1.「森林をつくる家」とは
まず、多くの人が「東京の木で」という言葉に引っかかるのではないだろうか? 東京には、高尾山があるのは知っているが、家が造れるほどたくさん木があるのか? という疑問だろう。だが、東京の面積の実に36%が森林なのである。つまりは、1/3以上が森林なのだ。もっとも、例えば林業のさかんな岩手県などでは、全体の77%が森林だから、それと比べるとかなり少ないのだが、23区内には森林といえるものがほとんど皆無であることを考えると、立派な数字。東京にも、熊が出るという話を聞いたこともある。東京の山を馬鹿にしてはいけない。東京の林業は、主に西多摩、奥多摩地区に集中している。
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東京の木で家を造る会事務局稲木清貴さん。
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東京の木で家を造る会の家、下北沢N邸。都心部では、外装に木を使うわけにはいかないが、珪藻土を使用して、呼吸する家になっている。
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すでにできている家を見学することができるのも、会員の大きなメリット。だんだん、自分の家に対してのイメージが明確になっていく。
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さて、日本全国にある近くの山の木で家をつくる会ネットワークの組織の中でも「協同組合東京の木で家を造る会」はユニークそのものといっていい。スタートは1996年「森林(モリ)をつくる家、職人(ヒト)とつくる家」という趣旨のもと、西多摩の山々の木を使った家を多数造りながら、新たな植林活動など山への恩返しを積極的に進めている。協同組合組織になったのは、2001年9月。正会員には、11の山主、2つの製材所、8つの工務店、8つの設計事務所が参加している。これに、年会費を払っているお客さんが、現在70人、賛助会員(森林インストラクターなど)が35人、協力会員45名で構成されている。協力会員は、正会員にはなっていないものの、勉強したいという工務店、設計事務所などである。すでに、家を建てた人たちは、特別会員という扱いである。
会の趣旨である「森林をつくる家」というのは、お題目ではない。森の材価を上げていくために、東京の木で家を造る。この会を通して家を建てる人には、覚悟が必要である。まず、入会金を払って会員になる。講習会や、山への見学会はすべて有料である。その後で、いよいよ家を建てる相談に入る。そこで即着工ではない。必要な木を、旬を選んで伐採、自然乾燥、成材を経てようやく着工開始なのである。最低でも着工までに1年はかかる。急いでいる人は、ここでは家を建てられない。
「うちは、お客さんに対して、お客さん扱いしない。きびしいと言っていいかも知れない。会員になるのに金がかかる。勉強会、イベント参加にも金がかかる。家が建ったら、植えに行かなくてはならない。まあ、これは記念植樹なんですが。本当に、森をつくるという趣旨を理解した人だけに残ってもらいたい。その代わり、意識の高い人だけが残るわけですから、われわれもお客さんに約束をする。あなたが、この木材を適正な値段で買ったことが、明日の日本の森を守る力になる、ということを」と語る東京の木で家を造る会事務局の稲木清貴さん。
「イベントでは、お客さんを連れて原木市場にも行くんですよ。大きな丸太が1万円で売られていく。これが40年育てた木の価格ですよ。あなただったら、この木を育てて1万円で、これからも続けていく気になりますか? って聞くんです。そういうところから、始めるしかないんですね」(稲木)。
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