森林活用セミナー開催情報や森林の活用事例などをお伝えします。
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『第1回森林活用セミナ-レポート vol.1』
2002/2/19
『森林活用セミナー』開催
2002年1月24日東京・神田の学士会館で、企業と市民と林業者が連携して21世紀の森林管理・活用システムづくりを考える『森林活用セミナー』が開催されました。
会場には、企業の環境部門担当の方や、NPOの代表の方など約250名の参加者が集まりました。入り口付近では、自然環境面の活動を行っている企業やグリーンツーリズムを行っている和歌山県のパネル展示、間伐材を利用したオフィス家具・パネルの展示、パソコンを使った地域森林管理GISの実演等があり、セミナーが始まるまでの間、たくさんのパンフレットを抱えた参加者が、展示物の前に集まっていました。
充実した内容のプログラム
林野庁長官・加藤鐵夫氏の発表風景
セミナーの内容を順を追ってご紹介しましょう。
●開会挨拶:全国森林組合連合会代表理事会長 飯塚昌男
●『森林・林業基本法の改正とその理念』:林野庁長官 加藤鐵夫氏
今から37年前に制定された旧林業基本法は、日本の急速な経済成長や国際化の著しい進展による森林・林業をめぐる状況の大きな変化に合わない面が見え始めていました。森林に対する国民の要請は、木材生産機能から水源のかん養・国土や自然環境の保全、地球温暖化の防止、レクリエーションや教育の場としての利用等多面的になってきました。そこで、昨年改正された「森林・林業基本法」では、国土の森林を利用目的に合わせて整備をすすめること(国民が目的に合った利用をすることで、山村の活性化や地球温暖化への貢献につながる)・林業経営を担う人材育成を図ること・木材の供給及び利用を確保することなどが、森林・林業基本計画として策定されました。
法改正に至る過程と、今後の森林活用のビジョンが伝わる内容でした。
森林と林業の現状
全森連・肱黒直次の発表風景
●『森林と林業の現状−森林と林業に今何が起きているのか?』:全国森林組合連合会組織部 肱黒直次
森林の現状についての理解を共有するための4つのポイントがテーマでした。
【1:森林は誰が所有しているのか?】
日本の国土の67%は森林。そのうち30%が国が所有する国有林です。それ以外を民有林といって、個人や企業が所有する森林(私有林)が60%、残りは都道府県や市町村が所有しています。この20年間に、個人の所有者は12万6000戸減っているのに対し、企業の所有は約8500社も増えています。この企業は全体で6万1700社ありますが、そのうち紙・パルプや農林漁業など林業に関係する会社は約2000社で、林業に直接関係しない業種の会社がかなりの森林を所有しています。
【2:森林組合の組織と事業について】
森林組合は民有林の所有者が出資して設立している協同組合です。事業運営は「森林組合法」に基づいて行われています。組織としては、組合員が出資して各市町村あるいは郡単位に森林組合を設立し、その森林組合が出資をして都道府県単位で連合会を設立しています。さらに各連合会が出資をして、全国連を組織しています。また、具体的な事業としては、法律で義務付けられている必須事業として、森林経営指導、森林施業・経営の受託、森林保護があります。また必須事業以外には、資金の貸し付け、林産物の販売、林地の売買などがあります。最近では、山村と都市をつなぐ事業として、林業へ新しく就業したい方へのガイドスクールや、森林環境教育の支援、森林ボランティアのお手伝いなども行っています。
【3:森林と林業に今、何が起きているのか?】
1つ目に、国産材が使われないという大きな問題があります。35年前に比べ木材生産は3分の1まで落ち込み、国内消費に対する自給率が19%にまで下がっています。2つ目に、木材価格の下落。20年前に比べて価格は3分の1以下に下がっています。3つ目は、採算性が破たんしてしまったということ。1960年にはスギ1立方メートルを販売することで12人の人が雇えたのに対し、現在では同じものを販売しても1人の人も雇えない状況です。4つ目は、山を守る後継者がいないという問題。1975年には22万人いた林業就業者は現在7万人に減り、そのうちの30%は65歳以上です。山村の人口も1965年に比べて30%減少しています。またそのうち4人に1人は高齢者です。5つ目は不在村森林所有者、つまり所有する森林のある場所に住んでいない人が1970年には15%だったのに対し、現在では25%に増えています。また、伐採跡地へ植林をしない人は76%、過去5年間に間伐を1回もしていない人は62%、さらに自分の森林がどこにあるのかわからない、森林の境界線がわからないという森林所有者が、在村者で25%、不在村森林所有者の場合は半数を超えるという状況になってしまいました。
【4:だれもりネットワークからのよびかけ】
日本人と森林の関わりは、わずか30年くらいの間に大きく変わってしまいました。これまで何千年も恩恵を受けてきた森林を、経済的に要らないと言って、放ってしまっていいのでしょうか? 次の世代へどういった森林、環境を残すのか。私たちの世代に責任があるのではないでしょうか。
グローバルスタンダードの中で市場原理は避けて通れないけれども、もう一方のグローバルスタンダードとして地球温暖化をみんなで防いでいかなければならない。この相反するテーマを調和を取って進めていけば、何とか実現することができるのではないでしょうか。
正面のスクリーンでは、具体的なデータや森林組合の事業内容が写真で映し出され、森林を取り囲む現状が参加者に強く印象づけられたようでした。
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