森林活用セミナー開催情報や森林の活用事例などをお伝えします。
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『第3回森林活用セミナ-レポート vol.1』
2003/3/17
第3回森林活用セミナー開催
平成15年3月1日(土曜日)、東京大学農学部「弥生講堂(一条ホール)」にて、「Dare Mori ネットワーク 第3回森林活用セミナー〜地球温暖化防止のために日本の森林を活用することの意義と実践〜」が開催されました。今回のセミナーでは、地球温暖化対策や循環型社会への転換など、大きな産業・社会の変革に取り組んでいくにあたって、いま国内の森林を活用することが日本の森林と山村を再生させ、世界の森林環境問題の解決にも貢献することを、住宅・住文化、環境教育、企業活動の面から意義を説き明かし、実践活動のネットワークを広げることがテーマとされました。
小雨降る寒い日でしたが、総勢12人のコーディネーター、解説者、報告者を迎え、木材をふんだんに使った会場は熱気に包まれました。
セミナーのプログラムと主な発表内容をご紹介します。
【プログラム】
●開会ごあいさつ
木下紀喜(全国森林組合連合会代表理事専務)
●Dare Mori ネットワークからの呼びかけ
肱黒直次(全国森林組合連合会組織部長)
●基調講演:「温暖化防止に向けて森林と林業をどう立てなおすか」
熊崎 実氏(岐阜県立森林文化アカデミー学長)
●テーマ1「身近な木材資源を活用することの意義と住宅文化」
解説 菊間 満氏(山形大学農学部教授)
報告 稲木清貴氏(東京の木で家を造る会)
水流潤太郎氏(国土交通省住宅局木造住宅振興室長)
藤原 敬氏(森林総合研究所理事)
●テーマ2「森林環境教育をすすめることの意義と実践」
解説 水野一男氏(木文化研究所代表・環境プロデューサー)
報告 林 和男氏(愛媛大学農学部教授)
関邦春氏(ジェイファンネット代表取締役)
●テーマ3「企業が国内の森林を活用することの意義」
解説 近藤修一氏(エス・ピー・ファーム代表)
報告 吉村昌也氏(UIゼンセン同盟ユニチカ労働組合書記長)
吉村邦雄氏(首都圏コープ事業連合商品部長)
大川誠氏(凸版印刷株式会社コラボレーション営業部・環境チーム)
温暖化防止に向けて森林と林業をどう立てなおすか
テーマ別の議論に先立って、DareMoriネットワークからの呼びかけと、岐阜県立森林文化アカデミー学長熊崎実先生より基調講演をいただきました。それらの要旨をご報告します。テーマ別の議論に先立って、DareMoriネットワークからの呼びかけと、岐阜県立森林文化アカデミー学長熊崎実先生より基調講演をいただきました。それらの要旨をご報告します。
○DareMoriネットワークからの呼びかけ
肱黒直次(全国森林組合連合会組織部長)
現在の林業を取り巻く状況は非常に厳しく、もはや林業関係者だけでは森林の整備さえも困難な状況にあります。この状況を変えるためには、企業−市民−森林の関係の再構築が必要だと思われます。DareMoriネットワークでは、これまで2回のシンポジウムを行い、報告書・事例集としてまとめてきました。これらの成果を活用し、小さな事例づくりから取り組んでいただきたいと思います。
○基調講演「温暖化防止に向けて森林と林業をどう立てなおすか」
熊崎 実氏(岐阜県立森林文化アカデミー学長)
林業の問題を考えるときに、林業は経済的に資本主義経済下で成り立たないから、市場外の力を借りてやっていかなければならないように語られていますが、果たしてそれは正しいのでしょうか?それならば、アメリカやヨーロッパの林業もうまくいっていないはずですが、そうではありません。なぜ、日本の林業はうまくいっていないかを考えないといけないでしょう。
現在の状況に対応した木材の利用を考えていく必要があるでしょう。それは次の5つの林業戦略です。
1. 健康で有機構造の大きな森林をつくって大気中の炭素を貯め込む
2. 成熟した森林から持続的に生産される木材で耐用年数の長い構造物をつくり、炭素を貯留する
3. 鉄、アルミニウム、プラスチックなどに代えて木材をたくさん使う
4. 木材の加工・輸送エネルギーをなるべく小さくして、化石燃料を節約する
5. 木材のカスケード利用を徹底させ、最終段階の残廃材も可能な限り有用なエネルギーに変換して、化石燃料の消費を削減する
また、国レベルでバイオマスエネルギーを利用する取り組みをしていかなければなりません。アメリカでは、木材のカスケード利用(多層利用)がなされていますが、日本では製材所に大型のボイラーが無いため木屑や低質材が利用されませんし、そのために原料の最終利用形態としての発電にまで結びついていないのです。岐阜県では、私どもの森林文化アカデミーを中心にしてバイオマス発電の取り組みをはじめていますので、注目してほしいと思います。
林業の現場の問題としては、森林所有面積が零細なため木材伐出コストが高くついています。このような構造的な問題は改めていかなければなりませんし、さらに高付加価値で製品を売れるシステムも作っていかなければなりません。先月、学生たちと一緒に伺った林家では、森林は38haしか所有していませんが、高い枝打ち技術によって高付加価値の木材を生産することで経営が成り立っていました。このようにしてグローバルな市場の中でニッチ(隙間)を見つけていく取り組みが、現在の日本林業には求められているのです。
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