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都市の水需要と水源林の今 
 多くの人が集い、住み、働く大都市。機能的・集約的に発展し続ける中で、安定した水の確保は都市にとって大きな課題だ。横浜・川崎をはじめ大都市を抱えた神奈川県も例外ではない。平成7〜8年に経験した深刻な渇水を契機に、県民に水不足に対する認識が高まった。
 一方、下流域の旺盛な水需要に対して、水源地の森林を取り巻く環境はどうだろうか。薪や木炭などのエネルギーの供給源として重要な存在だった里山は、燃料革命の中でその役割を失うとともに、木材供給を担ってきた林業も外材輸入の拡大等から長期にわたる不振が続いている。
 このため、これまで林業経営を通じて、適切な整備が行われていた水源エリアの森林の手入れ不足が進み、水源かん養などの公益的機能の低下が懸念された。
 もはや適切な森林整備を森林所有者だけに頼るのは不可能な状況だ。


県民が一体となった水源林づく
 こうしたことから、神奈川県では平成9年に「水源の森林推進課」を創設し、豊かな水源地域の森林を次世代に継承し良質で安定的な水資源を確保しようと「かながわ水源の森林づくり事業」を展開している。対象となる森林は、神奈川県内のダム上流域や河川源流域の私有林4万ha。
 水源かん養機能を高めるため、スギ・ヒノキの人工林については、樹齢100年以上の「巨木林」、上下2層からなる「複層林」、針葉樹と広葉樹が混生する「混交林」、広葉樹林については土壌の保全や部分的な広葉樹の植栽を施す「広葉樹林」という4つを目標とする森林づくりを掲げている。
 一方、多彩で活力ある森林をつくるには長い年月と地道な取り組みが欠かせない。そのために幅広い県民の理解と協力を得ていくことが不可欠であり、県民に森林の大切さや森林の整備の必要性を理解してもらうためのイベントの開催や森林ボランティア活動への支援も充実させている。


私有林を対象とした4つの手法
「水源の森林づくり事業」では、対象エリアにある個人等が所有する「私有林」を県が直接管理または支援する制度を用意している。これには「協力協約」「水源分収林」「水源林整備協定」「買取り」の4つの手法があり(図参照)、協力を申し出た森林所有者の事情にも配慮して選択できるようにしている。
 また作業道の整備や「協力協約」以外の森林施業計画の作成、境界線の確認についても県が対応している。

県内企業等が参画する水源林パートナー制度
 企業・団体の参画の形態として注目されているのが「水源林パートナー制度」。これは5年間以上継続した定額の寄付と森林活動による参加協力をお願いするもので、金額は1口/年30万円を2口以上となっている。特典として、参加協力活動をPRする表示板を設置したパートナー林を核に、森林づくり活動や自然とのふれあい活動等が行える。その際、イベント企画の相談については水源の森林推進課が、指導者派遣や用具の貸与は(社)かながわ森林づくり公社が対応している。
 すでに県内の企業や団体が20以上参加しており、社員研修や顧客を交えた社会活動の場などとして活用されている。


「水源の森林づくり」の窓口として対応している「水源の森林推進課」の森林整備班技幹の稲本克也さん(左)と森林交流班主幹の大野達二さん(右)
制作(社)全国林業改良普及協会
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特集 水源の森林づくり2

 

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