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哲学者の内山節氏によれば、欧州では都市から農山村へ移住する人が多くなり、フランスでは25年前に農山村の過疎化が終わったという。一方、わが国をみると、農山村から都市という流れはまだ続いているようだ。そんな中、都会人が農山村へ移住して山仕事をする「緑の雇用事業」が注目されている。地方行政から始まったこの事業から、都会から農山村への潮流のターニングポイントとなる可能性を探ってみよう。



不況が生んだ一挙三得事業
昨年9月に、木村良樹和歌山県知事が「緑の雇用事業」を全国に提唱した。長引く不況と構造改革は、都市部をはじめ多くの失業者を生み出した。木村知事はこうした状況を変革のチャンスと捉え、環境保全による雇用の場を農山村に創出し、都市から山村に定住して働いてもらう地方版セーフティーネットとすることを考えた。
ねらいは雇用対策だけではない。地球温暖化防止会議でわが国が約束したCO2の削減を実行するには、CO2吸収源である森林の整備が不可欠だ。林業の低迷から森林の荒廃と作業の担い手不足が叫ばれる中、「緑の雇用事業」への期待は高い。また、地球温暖化対策を担う仕事として、都会人の支持を得やすいだろう。
さらに地方の自立という面でのメリットも大きい。都会でのノウハウを持つ新規参入者が農山村に定住することは、過疎に悩んでいた地方の活性化にもつながる。まさしく"一挙三得"なのである。


ネックは雇用の期間
和歌山県では、今年度の緑の雇用事業に18事業17億円の予算を組んでいる。雇用創出は「緊急地域雇用創出特別交付金」(6ヶ月〜1年の期限付き)を主に活用し、広葉樹林等の植栽や枝払い、歩道整備、境界調査等の山仕事を創出した。このほか定住のための住宅や起業等の支援についても充実させている。
しかし、保証された雇用期間が最長1年では定住を決意した就労者にとってあまりにも心許ない。現在、林野庁では2年間雇用延長ができる制度の創設を来年度予算で概算要求しており、県もその制度を前提に最長3年間の雇用保障を予定している。自立するまでの間、行政ができるかぎり支援するという考えだ。


県外の新規就業者は125名
今年5月の就業相談会では644名が参加、2次説明会へは313名が出席し、受け入れ側の森林組合等との面接を経て最終的に125名(平均年齢38.5歳)が採用となった。相談会には熱心な参加者が予想以上に多く訪れ、結果的に狭き門になった。採用決定後はチェーンソーなどの研修を積み、順次採用された森林組合で働いている。

企業との森林づくり 「企業の森」
県では森林整備と企業をつなぐプロジェクトも考えている。「企業の森」は、大阪市のユニチカ労働組合が中津村と民有林2haの賃貸借契約を交わし、普段の管理は村の森林組合が担い、時折労働組合員がボランティアで森林づくりに汗を流すというものだ。これをモデルに県では、今後多くの企業と連携を模索していきたいという。


NHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」でヒロインの生家のモデルとされた民家。この裏手にはヒロインの名前にちなんで「木葉の森」と名付けられた町有林があり、紅葉や山桜、ブナ等の広葉樹が散策する人達の目を楽しませている。

和歌山県緑の雇用推進局新ふるさと推進課長矢野鉄男さん。
県では平成14年4月から緑の雇用事業の窓口として「緑の雇用推進局」を設置し県政の柱として取り組んでいる。
制作(社)全国林業改良普及協会
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特集 緑の雇用事業2

 

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