間伐

木質バイオマス炭化、ガス化システムへの期待 三菱重工業
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3.空洞化減少に歯止めをかけるために

現在、お金はかかるがCO2を回収する技術は着々と進んでいる。その一つが、アミンという溶液にCO2を溶かして回収するものである。だが、こうしてできる、液体化したCO2は、原油とほぼ同量という。つまり、1隻分の原油に対して、1隻分の液体CO2。これを処理するにも、海の底に貯留する、原油の油田に戻すなどの方法が考えられているが、いずれにしてもコストはかかる。炭素税の導入も必要だと思われるが、いずれにしろ、今後日本では石油を使うためのコストが上昇するのである。

「電気代換算で約1.5倍になるのではないかと見ている。すると、現在日本にある電力を使用する製造拠点が中国にどんどんシフトしていく。空洞化が進んでいくわけですね。それに、歯止めをかけるためには、エネルギー源の多様化ということを一刻も早く実現しなくてはならないんです」(大木)。

技術は、すでにできている。これを活用するには、社会システムのバックアップが不可欠である。それは補助金を頼りにするという意味ではない。もちろん、スタート時には、ある程度の公的資金の補助も必要になってくるかも知れない。だが、それだけでは、補助金がなくなったら、終わりという事態を迎えかねない。例えば、バイオマス発電で生じた電力の買い取り価格。4円から5円の原価ではペイできないが、11円とか12円という市場価格で買ってもらえればペイできるところまで来ているのである。もちろん、原料となる木質バイオマスの供給、集積といった問題もクリアしなくてはならない。

「間伐材などを使った炭化・ガス化システムは、規模が小さくても実用レベルになるんですね。村単位で発電所を持つこともできる。ガスから取り出したエタノールで間伐材を集めるトラックを動かす。あるいは、発生した炭で熱を供給する。北欧や、ドイツの林業の視察に行ったことがあるんですが、彼らは林業が食べていける状況をつくるのがうまいんですね。観光ばかりでなく、環境教育の場も提供している」(大木)。

バイオマスの活用で村おこしも夢ではないのである。

三菱重工業で、エネルギーと農業、林業の共存をテーマに研究開発が進んでいるのが、金森相談役の強力なリーダーシップがあったからという。その金森氏の業績を調べていたら、こんな言葉を見つけた。「粘って粘り抜く、そうすれば、いつかは曙光が見えてくるものと、私は確信しています」というものだ。

木質バイオマスを実用レベルでエネルギー源にしていくのは、さまざまな障壁があるに違いない。石油資源がもうすぐ使えなくなるのは分かり切ったことなのに、いまだに石油との価格比較で、新エネルギーの芽をつぶしてしまう人々もいる。粘って粘り抜く強さがなければ、化石燃料から自然エネルギーへのシフトという21世紀のエネルギー革命は達成できない。だが、この革命に成功しなければ、日本とか中国というレベルではない、世界的な飢餓を招きかねないのである。日本は、森林資源が豊富で、しかも技術力も世界有数である。自国のエネルギー問題をいち早く解決し、それを他の国々に広めていく義務があるのではないだろうか。


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