2.石炭のエタノール合成がすべての始まり
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炭化・ガス化試験運転実施中の汚泥炭化・ガス化システム(横浜製作所設置) |
三菱重工業では、かねてから長崎研究所で稲わら・籾殻や草木等からメタノール等を合成するバイオマスガス化液体燃料合成システムのテストを行っていた。横浜製作所の木質バイオマスから、炭とガスを取り出すプラントは、それとはまったく別の発想から生まれた技術と思われるかも知れないが、実は根は一つなのである。
「長崎でやっている技術は、長年の研究のたまものなんです。稲わら・籾殻などを乾燥させて、ミリ単位に破砕して、それを炉の中で舞上げるようにしながら一気に焼成する。そうすることで、タールを出すことなく、純度の高いガスを得ることができる。そこからエタノールも取り出せる。ただ、この方法は、ミリ単位に破砕するというところでひと手間かかるわけなんですね。それに対して、横浜で行っている研究は、もっとラフでタフなんです。つまり、木だったら丸太のまま入れてしまえる。これをゆっくり焼成することで炭とガスを手に入れる。タールは出てくるし、ガスの純度も低いんですが、これは後から改質、つまりクオリティーをあげてやればいい、という考え方なんです。もちろん、出てきたガスからメタノールを取り出すこともできる」(大木)。
炭とガスを取り出すシステムには、別のメリットもある。炭である。炭を蒸して、賦活することによって、表面積の大きな活性炭を作ることができる。これを土壌に蒔くと、さまざまな細菌が付く。これらが土壌中のダイオキシンを分解していくのである。ここで蒔かれる炭素は燃えない限り分解されることはない。炭素の固定化にも役立つのである。もちろん、出てきた炭をそのまま燃やすこともできるし、炭ペレットを作ることもできる。これらを
バイオマスの、炭・ガス化システムでは、実はFRP(ボートの材料)やプラスチックなどからもガスやメタノールを取り出すことができる。廃プラスチックから純度の高い燃料が取り出せるのである。しかも、副産物が出ないのも魅力だ。
しかも、この技術はもう一つのバイオマスの処理にも威力を発揮する。つまり、家畜の糞尿などの処理に関して、現在三菱重工業ではメタン発酵によるガスを取り出すプラントを実験中だが、この糞尿も藁や木片などと一緒に燃焼して炭化することも可能なのだ。完全に殺菌できるし、大規模な貯留施設もいらない。できた炭は、畑に蒔けば土壌を豊かにしてくれる。輸送の問題さえクリアできれば理想の処理技術ということができる。
木質バイオマスの炭化・ガス化システム |
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