間伐

現場レポート 間伐材利用を促進するために
 〜森林経営から住宅施工までを一体化した気仙地方森林組合の挑戦
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山に恩返しをしたい

間伐材は、伐り出せばいくらでも需要がある。こうした裏付けのもとに、気仙地方森林組合の間伐は行われている。平成12年に3森林組合が合併したため、人力や機材を一つの地域に集中できるというスケールメリットを活かして、平成13年には653haの間伐を行うことができた。平成14年もほぼ同様の面積の間伐を行っている。

「おかげさまで、間伐・間伐材コンクールで林野庁長官賞をいただくことはできたんですが、気仙地方森林組合には現在46539haの人工林があるんです。本当は、650haくらいの間伐では足りない。現在の10倍くらいの規模の間伐を行いたいところなんです。これからは、もっと間伐の規模を拡大していこうと思っているところです。森林組合を合併したことで、人力や機械力を1か所に集中することができるようになった。これが私たちの強みですね」(紺野)。

間伐を行うのは、いい杉を作るということ以外にも大きな意味がある。間伐を行わないと、下生えも生えず、土壌が剥き出しになってしまう。雨で養分豊かな土壌が流れ出てしまう。さらに、間伐を行っていないと杉も深く根を張ることができない。大雨が降ると、こうした杉が倒れて気仙川に流出してしまう。これが下流沿岸の養殖漁業の基地に損害を与えることもあるという。

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つい最近間伐が行われた林。集成材として活用できない木材は、森林所有者が薪にするなどして活用している

「戦前、戦後を通じて今くらい山に一般の関心がなくなっている時代もないと思いますね。木材が社会生活からどんどん排除されていく。手軽だから、安いからという理由でプラスチックやアルミが木材の位置を奪っていった。アルミは電気の缶詰と呼ばれているほど、作るのにおびただしい電力を必要としています。資源の無駄です。もちろん窓枠に普通の木を使っていてはだめですが、いまの技術では圧縮することでかなり比重の高い木を作ることができる。こうして作った圧密化木材でサッシを作ることも可能なんです。木を活用できるとこにどんどん木を使っていく。循環型社会を作るというのは、そういうことだと思う。木の家に住み、木の製品を使うということは二酸化炭素を固定化することにもなる。とにかく、私たちは山から大きな恩恵を受けているわけです。山は、放置されてどんどん劣化していく。何とかして山に恩返しをしたい。私たちは、その一念で林業を再生する活動を行っているんです」(紺野)。

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間伐風景。間伐は1か所に人力や機械力を集中させて行っている。

 

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組合長さんの部屋の照明。実はこの木枠の部分は気仙杉。東芝の和風照明の木材部分には、気仙プレカットからの木材が利用されている。気仙地方森林組合では、こうした工業製品のパーツなど木材の利用範囲を広げていくための部材開発にも余念がない。

気仙地方森林組合の成功の理由は、原木からプレカット材、工務店経営までトータルに取り組むことで、生産者から消費者までの距離を縮めていること、それから合併によるスケールメリットを活かした人力、機械力の集中、この2つに尽きるだろう。私には、日本の林業を再生させるためのヒントがここにあるように思える。もちろん、他の森林組合が同じことを行うには、多くの困難があるだろうことは予想がつく。とんとん拍子でことが進んでいるように見える気仙地方森林組合でも気仙木加連設立から16年もかけて現在の成果にたどり着いたのである。一朝一夕に同様のことを行うのは不可能だ。製材工場、集成材工場、プレカット工場などを揃える予算やノウハウの問題もあるだろう。だが、放置されて、ひょろひょろの杉が立ち並ぶ瀕死の人工林を救うための処方箋が確かにここにはある。各森林組合の努力に加えて国の支援も必要になるだろうが、日本の森林が元気になることを考えれば、必要な投資といえるのではないだろうか。


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