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森林活用セミナー
平成14年1月24日(木)、東京都千代田区の学士会館で、企業・市民・行政、林業者が集い、森林を守り活用することの意義や森林の新しい経済的価値についてともに考えるシンポジウム、「森林活用セミナー」(全国森林組合連合会主催)が開催された。日頃は、接点の少ない立場のパネリストが、「これからの森林との関わり」を通じて白熱した夢のある議論等が展開した。

写真 全国森林組合連合会の飯塚代表理事会長による開会挨拶
写真 加藤林野庁長官から、森林・林業基本法について説明。これからは国民の森林に対する要請に応えるために森林を3つに区分することや、木材の需要拡大のための循環利用の取り組みなどの話があった
写真 写真 全国森林組合連合会の肱黒組織グループ長による報告。豊富なデータを用いた解説が好評。会場では必死にメモを取る参加者の姿が見られた
 「森林は誰のもの?」という象徴的なテーマのもと、「21世紀の森林は誰が守り育てていくのか」という命題への第一歩として「森林活用セミナー」が開催された。まずは全国森林組合連合会の飯塚昌男代表理事会長による「森林の管理は、林業者だけではどうにもならなくなってしまった。企業・市民・行政・林業者が一体となって再び健全な森林と人との関係を取り戻しましょう」という挨拶の後、加藤鐵夫林野庁長官より、昨年改正された森林・林業基本法の概要と理念について、具体的な数値などを織り交ぜながら説明がなされた。さらに、主催者側からの問題提起として、全国森林組合連合会誰だれ森林もりネットワーク事務局の肱黒直次より「森林と林業に今何が起きているのか?」と題して森林と林業の現状について詳細なデータをもとに解説がなされ、真剣にメモを取る参加者が目立った。
 各々の話の主旨は、「森林整備の問題は国民みんなの問題として理解し、考え、取り組んでいかなければならない」ということで一致しており、森林・林業に関わりの少なかった参加者にも多少なりとも認識が持てるようなきっかけになっただろう。

パネルディスカッション

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木村良樹さん 和歌山県知事
 現在、都市ではリストラが深刻化し、一方では地球温暖化会議などで森林のCO2吸収が注目されています。ならば、都市から山村への人口移入が起こせないかと考えています。県で実施している「緑の雇用事業」では、行政が当面お金を出して都市からきた人が山で働けるよう支援しています。また、森林整備のためにも行政が県産材活用のコンセンサスをとりながら進めることも必要だと考えます。
 今、日本経済が大変な状況にありますが、一方で森林がクローズアップされています。これは千載一遇の機会ではないかという発想で前向きに取り組んでいきたいです。
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黒田章裕さん コクヨ株式会社代表取締役社長
 森林と企業との間に「環境」というキーワードを介して考えると、近年のISO14001や環境会計などを取り入れてる企業が増えていることからわかるように、多くの企業が環境を尺度として動き始めています。私たちは間伐材を利用した製品の提案を進めていますが、「環境」に注目したこういった考え方は、取り組みやすく、いずれ大きな「うねり」となると考えています。
このセミナーのような機会が増えれば、企業も応援者に回ることが増え、それが一つの加速力になるのではないかと思います。
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榛村純一さん 静岡県森林組合連合会会長・掛川市長
 私の家は林家で、代々二宮尊徳の教えにある「木を植ゆるは徳を植ゆるなり」という気持ちで木を植え育ててきました。もうひとつ「山一代、人三代」という言葉がありますが、これはいい山を作るには人が三代かかるということなんです。現在では材価低落による長伐期施業が進められていますが、「人三代」に相当する、しっかりした技術体系と大径木需要開発が必要ですね。
 現在、山の現場作業員は下流であと10年、上流であと14〜15年でほとんどいなくなります。このため、高度技術者の養成と林業メカトロニクスの導入、そしてエコロジカルな林道開設が重要でしょう。
 長い林業のスパンに合わせ、地域づくりと兼ねて落ち着いた人生設計ができるような林業税制、森林管理、木材利用技術の体系化が必要でしょう
写真 幸田シャーミンさん コーディネーター・環境ジャーナリスト
 海外での体験談を折り混ぜたコメントなどで話を盛り上げた

パネルディスカッションの質問に日本で森林に関わる活動をしている外国の方からの質問も飛び出した
 続いてのパネルディスカッションでは、「森林を活用するために行政、企業、市民ができること」と題して、パネリストに行政代表として和歌山県の木村良樹知事、企業家代表としてコクヨ(株)の黒田章裕代表取締役社長、林業家代表として静岡県森林組合連合会の榛村純一会長(掛川市長)を迎え、幸田シャーミン氏をコーディネーターに活発な議論が展開された。
 木村氏からは、「緑の雇用事業」等の取組の紹介とともに、「今が森林に人を呼ぶ一番のチャンス」など、さまざまな前向きな発言がなされた。また黒田氏からは、「環境」というキーワードを介して、企業が森林整備に貢献する「うねり」を作りたいという抱負が述べられた。榛村氏からは、自らの経験を踏まえた林業現場サイドからの問題提起と意見がなされた。特に現場作業員が15年以内にいなくなるという報告にショックを覚えた人も少なくないだろう。
 この後、会場からの質疑の時間が設けられ、中には外国の方からの質問も出た。
立場を異にするパネリスト達が「森林整備」をテーマに、どこまで接点が見いだすことができるのか多少心配な面もあったが、ふたを開けてみれば木村氏、黒田氏、そして幸田氏も、森林について今後それぞれの立場で発言していきたいという共通認識が得られたことは、「森林は誰のもの?」の元年として一つの起点になったといえよう。
 10分の休憩の後、「企業・漁業者・林業者からのメッセージ」と題した事例発表が行われた。最初にアサヒビール(株)環境社会貢献部の秋葉氏より「アサヒビールの森と水への取り組み」について報告がなされた。本誌前号でも紹介した「庄原林業所」のFSC認証取得の報告があった。
続いて北海道漁協婦人部連絡協議会北崎初恵会長による「森と川と海をつなぐ環境活動としての漁民の森林づくり」の報告では、森林づくりを地道に行ってきた努力の足跡が述べられた。
 3番手には「市民参加の環境林業を模索する」を表題に、大阪府森林組合の田中一嘉三島支店長による都市近郊の森林組合の取り組みについて、報告がなされた。
 以上をもってセミナーは終了したが、今回のようにさまざまな立場の人が対等に森林整備について関わっていくことを確認したセミナーはこれまで少なかったのではないだろうか。250名という参加者の多さからも、期待の高さがうかがえる。今後、このセミナーをきっかけにさまざまな取り組みが育っていくことに注目したい。

メッセージ
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【企業からのメッセージ】
アサヒビール(株)環境社会貢献部プロデューサー
秋葉 哲さん
ビール会社が森林づくりに関わった経緯と、近年話題のFSC認証取得について詳細な報告が行われた
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【漁業者からのメッセージ】
北海道漁協婦人部連絡協議会会長
北崎 初恵さん
昭和28年以降の不漁を起点に、海は川、山につながっているということに気がつき、今日まで木を植え続けてきた漁協婦人部の努力の道のりは胸を打つものがあった
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【林業者からのメッセージ】
大阪府森林組合三島支店長
田中 一嘉さん
観光林業、林業労働力の確保、環境林業、市民参加型の森林づくり、里山MORIMORI構想など、魅力的な話題が非常に豊富であった

制作(社)全国林業改良普及協会
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